【短編】ふたりのトモコ(9)
知子が二十歳の時にママが捕まった。
覚醒剤だ。
実はそれまでにも2回ほど逮捕されていて、そのたびに家に刑事が
来て、いろんなところを開けては覚醒剤を見つけていった。
2回目の時にはお客さんにバレて、経営していた料亭にはすっかり
客が来なくなっていた。
そして今回で3回目…。
ママは目に見えて痩せてしまい、貯金はもちろんあらゆるものを
手放して換金したけど、とうとう売るものもなくなってしまった。
お店の権利はもう私の知らない人が持っていた。
そして当然のように私の生活も一変した。
あんなにちやほやされていたのに、今は誰ひとり私に優しくして
くれる人はいなかった。
ママと暮らしていたマンションを出たのはいつ頃だったか…。
大学への進学も諦めて、私は風俗店で働いてママと暮らしていた。
ママは毎日、空を見上げてひとり言をつぶやいていた。
あんなに華やかな雰囲気に包まれていたママは、まだ40代なのに
枯れ木みたいになってしまった。
それから、ママが外出するのは売人と会う時か、意識がもうろうと
している時だけ。
顔のやたらと濃い外国籍の男の売人からママは欲しいものを買って
いた。
でもお金がないから、ママはその外国人にセックスをさせて、分けて
もらっていた。
ある日、その外国籍の男にフェラチオをしたら、あっ、という間に
行ってしまったので、味をしめてそれ以来フェラチオをすることに
した、と言っていた。
だって楽ちんだからさ。
ってママ。
私も似たようなことして…、なんて思ったら笑えてきた。
今はいいことなんて何もないけど、知子は時々楽しかった昔のことを
思い出していた。
その思い出の中には必ず友子がいた。