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超短編「ある朝、起きて」

ある朝、起きて。


それは昨日とまったく同じような朝でした。
家具の配置も、洗濯機から聞こえる音も。
感じられるものはぜんぶ昨日と同じでした。

ただ違っていたのは、じぶんの気持ちでした。
というより、こころが変わっていたのかな。

考えてみて、考えてみて、ふと、思いました。
ひょっとしたら、ひょっとしたら、うん。
わたしは、わたしは、大人になってしまった。

そのきっかけはいったい何だったのだろう?
昨日、食べたさんまの缶詰やチキンの唐揚げ。
それとも友人がふざけて言ったあの言葉?

とにもかくにも、どういうわけだか。

昨日と今日とでは、わたしは違う人なんです。
だから、今日のこの朝とも何だかぎくしゃく。
時間たちは、近くにやってこようとしないし。

ある朝、起きて。

わたしは、小さな大人になっていた。
今からしばらくはそれに慣れることにしよう。