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「暗闇に手を握る」3

写真と本文は関係ありません


【暗闇に手を握る】

モンクの曲が終わった。

コルトレーンの「A Love Supreme」に変わった。

この店のマスターは俺の好きな曲を知っている。


15の時に拾った女のこと。

あれから俺は自分の住むアパートに連れて行った。

お袋は寝ていて、目も覚まさなかった。

翌朝、俺のベッドにはマスカラが目に下に流れた若い女がいた。

相変わらず笑わせてくれる女だ。

まだ半分寝ている女に聞いた。

「いくつ?」

「17」

「ふ〜ん」

「ところでさ」

女は続けてこう聞いた。

「わたしとやった?」

「面白くてやる気にならなかった」

そう答えると女は、

「じゃ、今からやる?」

と。

本当はやりたかったが、何だかかっこ悪い気がしてこう言った」

「そんな気にならない」

これが俺とナオミの付き合いが始まった。

聞いてみるとナオミは金持ちん家の娘みたいだった。

高校は寮生活で、たまたま実家に帰っていた時に俺と会った?わけだ。

あれから3年経った。

どういうわけだか、ナオミは俺が気に入ったみたいだった。

何もかも満ち足りているように見える境遇なのに、あいつは荒れていた。

浴びるほど酒を飲んでよくベロンベロンになった。

そのくせ学校にはそんな自分をおくびにも出さず通っていた。

成績は優秀だった。

やがてナオミは高校を卒業して有名な女子大に入学した。

俺は高校3年になっていた。

2歳年上のナオミは俺にいろいろなことを教えた。

セックスのことも、ファッションのことも、アートのことも。

ナオミは週末にこちらに帰ってきては俺と会った。

同じ街に暮らす二人の境遇は全然違っていたが、お互いが好きだった。

付き合うようになって1年くらい経った頃だった。

ナオミは妊娠した。

俺には言わないで勝手に堕ろしてきた。

「今日、ヒロシとわたしの子どもがいなくなったよ」

手術の後にふらふらした足取りで俺のアパートに来て、そう言った。

ナオミからは消毒薬の臭いがした。

きれいなブルーのセーターを通して…。

俺はナオミと朝までいっしょに過ごした。

夜、ベッドの中でナオミは俺の手を握ってきた。

その時の感触を、俺は生涯忘れることはなかった。