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【短編】ふたりのトモコ(6)

写真と本文は関係ありません


17歳の冬は友子にとって忘れられない冬になった、

お母さんが急に引っ越すことを決め、大好きな知子やそのママと
簡単には会えなくなってしまったのだ。

もう数え切れないくらい多くの男の人とくっついたり離れたりして
いたお母さんが、結婚するって言い出した。

お店も閉めて、こんどの彼氏、近藤さんと一緒に暮らすと。

近藤さんは普通のサラリーマンだったけど、出張の時におかあさんの
お店に来ていた。

その頃のお母さんはお店のお客さんも少なくなってきて、経済的にも
苦しかったみたいで。

そんな時に近藤さんが優しくしてくれたから、あっという間に好きに
なってしまったみたい。

お母さんは40歳で2回目の、あ、正確に言うと私を産んだ時は父親の
籍には入っていないから、初めての結婚をすることになった。

友子の父親…。

お母さんに何度も聞いたけど、お母さんはいつもそれが分かんないんだ
よね、って笑いながら答えるだけだった。

本当は分かっているはずだ。

友子はお母さんがとぼけて誤魔化しているだけだって思っていた。

それはともかく、近藤さんはすごくいい人で、55歳なんだけど
むっちゃ真面目で今までに結婚もしたこともなければ、女の人と
付き合ったことさえない人だった。

おそらくセックスもしたことがなかったと思う。

だからお母さんは近藤さんの童貞を奪った女性、ということになる。

やたらとやりまくっていたお母さんとは正反対とも言える生活を
送っていたのに、近藤さんとお母さんはとても仲良くなって、
トントン拍子で結婚することになった。

何だかうれしいような寂しいような不思議な気持ち。

心配なのは本当にこのままちゃんとお母さんが浮気とかしないで
近藤さんと夫婦を続けられるかなぁ、ってことだけど、こんど
引っ越すところは今のところからずいぶん離れた場所で、しかも
南の島だからお母さんが開放的な気分になっちゃったら、本当に
冗談抜きで浮気しちゃうような予感がすること。

ま、考えてもキリがないし、なるようにしかならないけど。

とか悩みながらも、友子は新たな生活への期待感もあった。

高校2年になっていた友子は親友の知子と遠く離れてしまうことに
なった。

実は高校生になってから、あれほど仲が良かった知子とも、あまり
会っていなかった。

垢抜けないままの友子とは異なり、高校生になった知子はさらに
きれいになって、おまけに化粧もするようになっていたので、
すっかり大人の女になっていた。

だから垢抜けない友子のことを避けるようになっていたのかもしれ
かった。